技術経営ろぐ

大学院で学んだことを書いていきます

大学院受験期その1

昨年くらいから、だいぶ自分の仕事量を自分でコントロール出来る環境になってきたので、 これを期に、中年を迎えるこれからの自分のキャリアというものを考えた。

私はだいたい3年に一回くらいのペースで今の仕事を続けるか、それとも違う環境に移るか じっくり考えることにしている。というかだいたい3年サイクルで今取り組んでいることに 飽きてくるという方が正しいのかもしれない。

ところで、親しい人は知っていると思うけど私は大学に行ってない。 自分は20歳くらいから随分と長いことITの世界で働いているが、自分の周囲の人たちはだい たいみんないい大学を出ていて、修士や博士の人も珍しくはない。

今の仕事をしていく上で今さら学歴がどうのということは全く言われないのだが、特に現在 の職場でマーケティングのようなことを担当するようになって、30代までに経験してきたエ ンジニアやコンサルタント、アーキテクトといったキャリアの延長線上では得ることが難しい 体系化された知識や深い洞察みたいなものが、自分には著しく欠けてるなあと思う場面が増 えてきた。

そんなわけで、不惑の年を迎えるまでのわかりやすい目標として、どこか社会人を受け入れ てくれる大学で自分のこれからのキャリア形成に有用な知識を体系的に学び、できれば学位 を取得したいという欲求が強くなってきたので、真剣に進学というものを考え始めたのだっ た。

社会人学生という選択

昔ほどではないにせよ、社会人として働きながら学校に通うというのはまだまだ珍しいこと なんじゃないかとおもう。とくに学科によっては社会人を受け入れられるような運営ができ ている学校が全くなかったりする。

ともあれ社会人が学校で学びたいとおもったときに、まず検討するのは通信制の大学なんじ ゃないかとおもう。通信制の大学でまず思い浮かぶのは放送大学だ。放送大学は良い大学だ とおもう。たまにテレビで放送大学の講義を観ることもあるのだが、コンピュータの回路の 仕組みや、統計学の基礎について高卒の私でもわかるような授業がやっていて、すごく良い とおもった。(後から知ったのだが、コンピュータ回路の授業の先生は放送大学学長の岡部 氏自ら担当している授業だった)

もう一つ検討したのは北海道情報大学だった。この学校は、コンピューターサイエンスにつ いて働きながら学べるという点で魅力的だ。しかし、既にIT業界でエンジニアとしてそれな りのキャリアを持っている自分にとって、これは今さら学校で学ぶのはちょっと...というよ うな授業も多かった。

さらに、放送大学にしても北海道情報大学にしても学位をとろうと思ったら最低でも4年間 在学しなければならない。正直言って、飽きっぽい自分が4年も通信教育を続けられる自信 はない。

大学院

進学についてどうしようか迷っていたときに、同僚が教えてくれたのが大学をスキップして 大学院に進学するという道だった。大学院ならば2年間頑張れば修了できるし、一般教養み たいな今さら感の強い学科を避けて専攻に特化した授業をとることができる。

社会人で大学院進学というと一昔前に流行ったMBA経営学修士)が有名だが、自分として はMBAよりはもうちょっと技術的なコンテキストに軸足を置いた専攻がよかったので、 MOT(技術経営)が学べる大学院を探すことにした。

東京農工大学大学院

大学院工学府 産業技術専攻(専門職学位課程)

バランスの良いカリキュラムで学費も安いのだが、いかんせん家から遠すぎる。休日はとも かく都心で働いた後に夕方に小金井までいくのはちょっと精神的につらいと思った。

日本工業大学大学院

専門職大学院 技術経営研究科 技術経営専攻

家からかなり近くのキャンパスで開講している点と、なんといっても頑張れば1年で修了でき るというのは魅力的。しかし私立だけあって学費が高い。そして1年で修了しようと思うと平 日ほぼ毎日学校に行く必要があり、自信がない。カリキュラムの内容は悪くはないが、少し 古めかしい感じがした。

資料請求をするために電話したときに、高卒でも受験できるかきいてみたところ、学校独自の 受験資格審査に合格すれば高卒でも入学試験を受けられるとのこと。ある程度以上のしっかり した社会人経験があれば、受験資格審査で落ちるということは多分ないとのことだった。

北陸先端技術大学院大学JAIST

北陸先端技術大学院大学 東京サテライト「技術・サービス経営コース」(博士前期課程)

JAISTは大学を持たない大学院大学としてかなり歴史のある学校で、理系の人たちには有名な 学校だとおもう。その名の通り北陸地方にキャンパスがあるので、さすがに東京で働きながら 通うというのは厳しいから全く考えていなかった。しかし、実は社会人向けのコースは都内に サテライトキャンパスがあってそこで受講できるということをきいた。さっそく調べてみると 確かにJAIST iMOSTという技術経営を学ぶコースが品川で受けられる。内容もいいし、なんと いっても国立なので学費が安い。なお修了したときに貰える学位は専門職修士ではなく普通の 修士となる。

資料請求をするために電話してみると、なんと高卒は受験すらできないということだった。 残念。まあ格式高い大学院が高卒をポンポン受け入れるのはどうかともおもうので仕方がない。 ちなみにもう少し詳しくいうと最終学歴が高卒でも大学を中退していたり、短大や専門学校など で高校卒業後になんらかの教育を受けている場合には、受験資格審査という学校独自の審査 を受けること入学試験を受けることができる。だがそうでない場合は応募すらできない(して も書類で落ちる)ということだそうだ。

東京理科大学大学院

専門職大学院 イノベーション研究科 技術経営専攻

こちらも家からかなり近くのキャンパスで開講している。実務者経験がある人を対象とした 講義となっており、教授陣にも産業界出身が多い。2年間のコースとなるがカリキュラム内容 はよく練りこまれており、実践的なMOTを学ぶには非常に良い内容だと思う。

学費は高い。が、今年度から厚生労働省専門実践教育訓練給付金の対象講座となって おり、普通に雇用保険の加入履歴がある人なら約100万円くらいは国から補助が出る。

それでもまだ高い。ということで理科大MOTでは申請者全員が受けられる無利子の奨学金制 度がある。ふつうは借金をするのは避けたいところだが無利子となれば話は別。ファイナン スについてちょっと知識があればわかることだが、無利子の借金というのはボーナスみたいなも ので借りた方が得。1年に130万円まで借りることができ、総額で260万円まで借りれる。前述の 給付金もあわせると自分の少ない貯金を切り崩さなくても十分に学費が支払えそう。

産業技術大学院大学

専門職大学院 産業技術研究科 情報アーキテクチャ専攻

こちらはMOTではないけれども技術系の大学院。いろいろご縁があって中の人にも知り合いが いるので一応受験を検討はした。公立の学校だから学費も安いし、内容はIT系だから現在の仕 事にかなり直結している。キャンパスは品川シーサイドになるのでやや遠いが、まあ通えなく はない。

ここは、職業訓練という意味で体系的に情報システムやプロジェクトマネジメントについてし っかり学びたいという人にとっては良いカリキュラムだと思う。あとシステムエンジニアやプ ログラマとしてそれなりの経験があって、今後もエンジニアとして働いていくことを志向して いるが技術的な経験を棚卸しして整理したいという人にもあうんじゃないかと思う。

自分が結局ここを受験しなかったのは、カリキュラムの内容のうち半分以上はこれまでシステ ムエンジニアとしてやってきたキャリアの中で習得済みとおもえるような内容であることと、 大学院では「これまで自分がやってきたこと」ではなく「これからやっていきたいこと」に 焦点をあてて勉強したいとおもったことが理由である。

その他

その他にもMOTを勉強できる学校で有名どころだと東京工業大学とか、 東京大学とかがある。 早稲田のMBAも内容的にはMOTの要素も含んでいるようなのでそういう選択肢もあった。

しかし、東京理科大ガイダンスと体験授業に参加して、もはや他の大学を受験しようという気 は起きなくなっていた。ということで、最終的には理科大を受験することにした。

(つづく)